REPORT

ピアスに込められた自由への願い

2013年10月23日 13:32:00
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 『原発と戦争』展*のため、パレスチナ・ガザ地区で撮った写真を整理していた時のことだ。私は、ふと手を止め、一枚の写真に見入っていた。美しい乙女が自身の描いた絵を手に、こちらを見つめている写真。彼女の耳と、絵の中の少女の耳には、蝶の形のピアスが飾られている。ピアスの乙女―シャハッドは、ガザ在住の若手アーティストであり、人権活動家。私が現地で世話になっていたホームステイ先の次女だ。

 シャハッドは蝶をモチーフにしたアクセサリが好きで、ピアスやら髪飾りやら、いろいろ持っていた。

「だって、蝶ってどこでも好きに飛んでいけるでしょ?私たちとは大違いだわ」

 そう、シャハッドが言っていたのを思い出す。パレスチナ・ガザ地区は、イラエルとエジプトに囲まれた飛び地であり、特にイスラム組織ハマスが2006年1月に選挙で大勝したからというのもの、イスラエルや親米的なムバラク政権下のエジプトは、ガザの人の出入り、物資の流通を極端に制限するようになった。そのため、ガザ外の高度な医療を必要とする重病人や重傷のけが人が境界を越えられず、むざむざと亡くなる、ということも珍しくないのだ。そして、そうした状況は「中東の春」で一時的に改善されたものの、エジプトでのクーデターの後、再び「中東の春」以前の状況へと逆戻りになってしまった。

 ある日、彼女がベッドにうずくまって泣いていたことも思い出す。シャハッドは現地NGOからトルコでのジャーナリズム研修の誘いを受けていたが、果たしてトルコに行けるのか、見通しが立たないのが悲しいと言う。トルコのビザを取るにはエルサレムにある大使館にパスポートや必要書類を届けないといけないが、シャハッドがガザから出ることは難しいし、ガザからエルサレムへは郵便や宅急便も使えない。結局、エルサレムに行ける外国のNGO関係者に必要書類を託すことはできたものの、シャハッドは封鎖されたエジプトとの境界を越えられなかった。

 いくつもの人権団体が指摘しているが、現地の人々の移動の自由を徹底的に妨げているガザ封鎖は、国際法で禁じられている「集団的懲罰」にあたり人道に反するものだ。ある民族や地域に属しているというだけで、迫害を受けることがあってはならない、はずなのだ。本当は。

 そういえば思い出した。蝶のピアスの写真を撮った時のことを。シャハッドの、ガザの人々の思いを、日本の人々に伝えるという約束。少々遅くなったけれど、今度の写真展では、彼女のピアスの写真も使おう。ピアスに込められた自由への願い。

「私は蝶になりたい」


(了)

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*「原発と戦争」展については、こちら。
http://reishiva.exblog.jp/21317404/